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   彼女は正しい人だ。正しく、いつも前を向いていた。  自分にはないその姿勢をいつも眩しく思っていた。  強い人だと、ずっと思っていた。そんなことで壊れてしまうなんて、思いもしなかった。  でも、彼女の理想、彼女の希望、なにもかもが裏切られたとき、彼女は崩れた。  彼女は脆かった。どうしようもないくらい。  世界が彼女を裏切った。彼女が信じる世界が、彼女を裏切った。  それを知ったとき、自分の中のなにかも崩れた。  こんなこと、許されていいはずがない。  誰にも裁かれないなんてこと、あっていいはずがない。  報いを、受けさせなければならない。  自分の中で、黒いなにかが首をもたげていた。
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