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【とちゅうに】
あなたが文章の推敲に集中していると、瞬きをするたびに脳内へ、異様な物体が浮かび上がる。数度の瞬きを繰り返して確認すると、それは林檎を齧るゴリラの絵が彫られた、宙に浮くランタンだった。
「推敲は大変な作業です。ここまで読んでくださっているあなたの目と、凝った肩を、せめて揉ませてください。モミモミ。ああ、オノマトペが……」
いつの間にか瞼を閉じていたあなたの中で、ランタンが明度と自信を落した。瞼裏の視界に、いつも通りの黒が滲む。
深呼吸という名の休憩を挟んだあなたが目を開くと、伸ばされた両腕が木製の机上に垂れていた。腰と背の硬い感触が、机と同じような木製の椅子であると教えてくれる。
僅かに甲高い音を立てて、物理法則を無視した珈琲が一杯、机に現れた。浮かぶ湯気は、珈琲の暖かさを象徴すると共に、奇妙な文章を二十八項目吹き出す。
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