“女教皇”は殺【せ】ない

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“女教皇”は殺【せ】ない

 オレが裏口で暫く潰していると“女教皇”は表から回ってやってきた。一応男物のコートで隠してるがひでぇ血の匂いだ。 「お疲れさん。首尾は?」 「うふふふ。ブツはぁこちらにぃ。事務所の方々はぁいつも通りですぅ」  語る表情は生気に艶めいてと言わんばかりだ。野郎どもには同情するぜ。  この女は物心ついたころから超能力の自動発動で望むと望まざるとに関わらず、傷を与えた部位を完全に再生し殺した全てのものを復活させる。  だから他人を酷く傷付けることになんの抵抗もないし、拷問を受けると逆に健康にすらなるもんだから心折られた連中の多くはコイツにじみた態度すら取り始める。  まったくえげつない“女教皇”サマもいたもんだぜ。 「とりあえず隠れ家(セーフハウス)でシャワーでも浴びろ。その匂いじゃ表通りも歩けやしねえ」  路地裏から迂回するよう促すと、コイツはにたぁといやらしい笑みを浮かべた。 「“正義”ちゃんがぁ、お風呂でねぎらってくださるのぉ?」 「絶っっっ対オマエと風呂は入んねえから心配すんな。広い風呂ひとり占めだぞ」 「あらぁ残念ですぅ」  コイツは何事もなかったみたいに笑ってっけどな、ちょっとした傷やささくれまでで抉ってくるような女の前で裸になんかなれるかよ。  冗談じゃねえ!
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