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小高い丘から豪邸を眺める。
「今回のターゲットは、あの家だ」中年の男が私に言った。
「…大きな家ね」ここからなら家の全貌がよく見える。
「1階は建築設計事務所らしいからな」
「お宝は3階の奥の部屋だそうだが…大丈夫か?」
「何、私の心配をしてくれるの?嫌ね、まだそんなに衰えていないわよ」
そう言いながらも、少し不安がつきまとう。
「お前とまたこうして一緒に仕事ができるとは思いもしなかったよ。10年前、お前の引退は正直痛手だった」
「…ごめんなさい。あの時は…そうするしかなかったのよ」
「わかっている」男は、優しい顔で私を見つめる。
「…相変わらずね」私はフッと笑う。
「何がだよ」
「あなたのその表情よ。『マザーキラー』と言われただけあるわね」
「お前こそ…お前の手にかかれば落ちないお宝は無いと言われていたさ」
二人、黙って見つめ合う。
10年間の空白があるが、力を合わせて大きなミッションもこなしてきた激動の日々が、昨日のことのように鮮明に思い出す。
「行くわね」
「あぁ、健闘を祈る」
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