復帰

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 ピーンポーン。門柱のインターホンを鳴らす。 『はい』家政婦だろうか。若い女性の声だ。 「こんにちは。あおばシッターサービスの上田と申します!」  そう、私は保育士歴28年、4人の孫の面倒10年の、現在60歳。  本日より、こちらのお宅の0歳児と3歳児のベビーシッターに派遣されたのだ。先程の男は昔勤めていた保育園の元同僚で、現在『あおばシッターサービス』の社長だ。先日偶然出会い、雇用してもらった。  10年前、息子の嫁に2人の孫の面倒を任され、仕方なく保育園の仕事を辞めてしまった。その延長で娘も「ついでに」と2人の孫を押し付けてきた。  今では孫4人全て学校に入ったので、私は必要とされなくなってしまっていた。 『あぁ、お待ちしておりました!お入りください!』  事前資料によると、3歳児のイヤイヤ期に加えて0歳児の夜泣きが酷くなってきたとか。  子供は一人一人みんな違う。  38年の保育歴の常識はもしかしたら通用しないかもしれないが、私の持てる全ての愛情をこの2人の「宝物」に注ごう。  3階か…エレベーターはあるかしら…。  5年前に痛めた膝がまたぶり返さないか心配しつつ、大きな門を開けた。  さぁ、10年ぶりの社会復帰。ベビーシッターとして毎日頑張ります。
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