プロレタリアの分銅

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労力の割に一万円は安くないかと田代さんに聞いた事がある。 「一万円なら警察に垂れ込まれない金額なんだよ。三万、五万、十万になって来ると警察に垂れ込む奴も出て来るからな」 田代さんはタバコの灰を空き缶に落としながらそう説明してくれた。 「それによ。こんなサイトに登録してくる奴が五万も十万も持ってないんだよ。せいぜい持ってて一万円だ」 僕は「なるほど…」と自分に置き換えて考えると頷いてしまった。 更に、入力されたクレジットカードの情報はフィッシング詐欺グループに売られる。 そっちの方がどうもお金にはなるらしいが、僕らには公開されない。 すべての相手が騙される訳じゃない。 せいぜい十人に一人。 僕は今、一人で百人程を相手に色々な金持ちの女の設定でメールを送り続けている。 ある時は加奈、ある時は紹子。 色々な名前と設定を使い分け、相手の情に訴える様な内容のメールを送る。
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