プロレタリアの分銅

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金持ちだからこそ、誰にでも相談できる訳じゃないという建前らしいが、不自然な話でもある。 僕も好きでこんな事をやっている訳じゃない。 シンガタの流行で会社をリストラされ、寮生活だった僕は、一週間の間に退去しろと言われ、追い出される様に寮を出た。 両親は田舎にいるが、そう簡単に「帰ってきました」と戻れる関係ではない。仕方なく、安い漫画喫茶に入り、二週間程過ごした。 もうそろそろ手持ちも尽きそうな頃、漫画喫茶のシャワールームから出て来た所を田代さんに声を掛けられた。 「仕事しない。ずっとここで生活してるでしょ…。部屋も準備してあげるし、食べ物も支給するよ。給料は出来高だけど、住むところと食べる事には困らないから、今より良くない」 田代さんはドリンクバーのグラスを片手に僕にそう言ってきた 僕は長い事考えたつもりでいたが、田代さんに言わせると即返事をしたらしく、次の朝には田代さんに連れられて、このワンルームマンションにやって来た。
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