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そう言うと、小柄の男は後ろにいた大柄の男へ目配せをした。コクっと頷いた大男は右手に先程の火球を出し、遠くに投げた。
球体の炎は勢いよく飛んでいくと広場の入り口にあった大きな樹木に当たり、そしてそれは一瞬にして炎の柱となった。
叫び声が至るところから聞こえ、その場はパニックに陥る。皆が恐れをなしていた。
「黙れ! 動くなよ、声を出すなよ、反抗するなよ! 少しでも妙な真似をしてみろ、容赦なく殺すぞ」
大男の低い声が響き、村人たちの叫び声はすぐに止んだ。
村の警官もこの場にいるはずなのに、一向に助けようと出てくる気配がない。それは三人の炎操者も同じだった。特にプクの父親は顔が青ざめていて、今にも倒れそうだ。
バルは体が震えていた。
今まで味わったことのない恐怖感。本物の悪人を前にして、立ち向かう勇気などなかった。
村長は流石に観念したのか、彼らを案内し始める。
「……村人たちに危害は加えないでください。ブルーダイヤは私の自宅の金庫に保管してあります」
「よろしい。では行きましょう」
男たちは歩き出し、広場を離れようとする。その時、大柄の男がエレナの前を通った。
「カシラ、ちょっと待ってくれ。宝石もいいが、俺は女が欲しい。特に若い女だ。こいつなんかいいじゃねーか。脚も悪いから逃げられる心配もねーし」
「お前も好きだな。まあ好きにしろ」
「ありがてぇ」
その男はエレナの前で止まってニタニタと下卑た笑みを浮かべた。
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