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「敵だけに悪魔の加護が味方しなければそれで結構……よし! 突撃準備の合図を送れ!」
副官の返事を受け、満足げに頷いたゴンザロウは、今度は伝令官の方を振り返って指示を飛ばした。
「ハッ!」
すると、伝令官はすぐさま大きな旗を天に掲げて左右に振り、丘の下に群れなす軍勢に合図を送る……。
それに隊列を組んだ軍兵の間には遠目でもわかるくらいにピンと張り詰めた空気が走り、馬の嘶きや何かを叫ぶ各隊の指揮官の声も響いてくる……。
「突然準備、完了しました!」
「よーし! 竜騎兵隊、突撃ぇぇぇぇぇぇーき!」
やがて、現場より旗信号が返ってくると今度は逆に伝令官がゴンザロウに伝え、彼が振り挙げた手を下ろすと同時に、プゥアアアアァ~…! と突撃ラッパの音がけたたましく周囲に鳴り響いた……。
直後、ワァァァァァァーっ…! という鬨の声とともに、最前列に並んだ騎馬の大群が雪崩れを打ってフランクル軍目がけて駆け出してゆく……わずかの後、ハリネズミの如く鋭いパイクを構えたフランクル軍のシュヴァイデン傭兵隊と、その乗馬歩兵の一団は激突した。
パン! パン…! という乾いた発砲音とともに白い煙を上げ、下馬した兵達が散弾や小銃を放つ度に、そそり立ったパイクの林が所々倒木するかのようにゆっくりと倒れてゆく……ゴンザロウの考案した竜騎兵を用いる戦法は、どうやら思惑通り成功を見たようである。
「第一撃はなかなかいい調子のようだね」
「おそれいります」
その様子をカルロマグノも満足げに眺め、ゴンザロウに再び賛辞を贈る。
だが、エルドラニア側の圧倒的優勢に思われたその戦場の片隅で、ゴンザロウには想定外の事態が発生していた……。
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