Ⅰ 新時代の戦

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「伝令ぇぇぇ~っ! 竜騎兵(ドラグーン)隊に編入した一部の歩兵達が、ツヴァイヘンダーを持って斬り込みましたぁぁぁ~っ!」  突如、前線からの報告を受けた伝令官のそんな声が響き渡る。 「なにっ!? 我が銃を持て!」  その報告に驚いたゴンザロウが従者に申し付け、望遠鏡型照準器(スコープ)の付いた豪華な金装飾の特注マスケット銃を受け取って戦場を覗えば、確かにエルドラニア兵の一隊が長大な剣を手に突撃し、パイクを突きつけるフランクル勢と激しい乱戦を繰り広げていた。  ツヴァイへンダーの強烈な一撃で、見事、パイクの穂先を斬り落とす者もいる一方、逆にそのパイクの鋭利な先端に哀れ串刺しとなるような者もいる……まさに文字通りの死闘である。  もっとも、こうした歩兵の突撃によりパイクの槍襖を食い破ることは、従来行われてきた一般的な戦法なのではあるが、今回、ゴンザロウはそれを意図してはいなかったし、無論、そんな命令を出してもいない。 「これまでツヴァイヘンダー部隊として用いていた剣盾兵(ロデレロ)(※剣と盾で武装した歩兵)達が竜騎兵(ドラグーン)隊への編入に反発した模様です! どうやら火器で戦うことが不満だったらしく……」  状況を照準器(スコープ)で確認するゴンザロウに、伝令官は続けざまそう伝える。 「それに、やはり重騎兵突撃を排したことに不満を持つ騎士が先導したとの報告も。紋章官によりますと、ラマーニャ領主のドン・キホルテス殿と思われるとのことで……」 「なに!? またあのドン・キホルテスか!」  その名を聞くと、ゴンザロウはマスケット銃を忙しなく動かし、乱戦となる前線に照準器(スコープ)から覗く拡大された丸い視界を走らせる……すると、巨大な両手剣を自在に振り回し、次々とパイクの先をへし折る重武装の騎士を一人見つけた。  胸甲騎兵同様、頭にはクロウズヘルム、その身にはキュイラッサー・アーマーを纏ってはいるが、さらに籠手と脛当てを追加装備し、肩には〝交差する剣と横向きの兜〟の紋章の描かれたカイトシールド(※逆三角形の騎兵用の盾)まで提げている……まさに古風な中世騎士を思わせる甲冑姿だ。 「ええい! やつは胸甲騎兵の配属であろう!? 初撃は銃でも、乱戦となれば存分に剣を振るえるというものを……」 「誰だい? そのドン・キホルテスというのは?」  獅子奮迅の闘いを見せるその騎士を照準器(スコープ)越しに眺め、苦虫を噛み潰したような顔で愚痴を零すゴンザロウに、怪訝な顔でカルロマグノが尋ねる。
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