神様、もう少しだけ

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神様、もう少しだけ

ぐうぐう鳴りっぱなしのお腹を抱えて 私は家への道をヨロヨロと歩いていた。 なんだか歩く足にも力が入らない。 頭の中は食べ物のことしか浮かんでこなかった。 そんなフラフラデブの私の鼻に ふんわりと香ってきた甘い香りは… 「た、たい焼きだ…!!」 昨日まで出ていなかったたい焼きの屋台が…。 お、美味しそう…!! 私は引き寄せられるように屋台に向かっていた。 「いらっしゃい!」 「えっと、あんこ3つとチーズクリームが3つと 栗入りを3つ下さい!」 「はいよっ」 も、もちろん家族へのお土産だ。 自分のは…3つだけだもん。 私は自分と、どこかで見ていそうなマコトに ぶつぶつと言い訳をしていた。 「まいどあり〜」 たい焼き9個が入った大袋を抱えて 私は歩き出した。 胸の辺りがぽかぽかと暖かくて、 より甘い香りが鼻腔をくすぐる。 ああ〜…たまんないよお… 「あたたかいうちに1個食べようかな…」 そうだよ。冷めたら固くなっちゃうし。 私は袋からあんこ入りのポッテリとしたたい焼きを 一つ掴んで、頭からかぶりついた。 「美味しい〜!!幸せ〜〜!!」 空きっ腹にたい焼きの甘さが染みる。 熱々のあんこに舌をヤケドしそうになりながらも、 私は夢中でたい焼きを食べた。 美味しい…美味しすぎる…!! あっという間にたい焼きは口の中で溶けたように なくなってしまった。 「次はチーズクリームだな…」 変わり種のこのたい焼きもいい…! ほのかな酸味が何個でもいける気がするよ。 「ムフフ、栗入りも美味しい〜!!」 自分の分を瞬殺でたいらげてしまい、 私の胸元には「家族のお土産分」6個が残っていた。 なくなっちゃったよ、自分の分…。 …もう少し… …神様、もう少しだけ…いいよね…? 呪文のようにもう少しだけ、を繰り返しながら、 私の手は残りのたい焼きが入った袋に延びていてき…。 家の前に着いた時、 私が胸で抱えていたたい焼きの袋は マコトのお腹みたいにぺちゃんこになっていた。 た、食べちゃった…たい焼き9個…(絶句) 「あ、明日から頑張るもんね…」 この事実をマコトに知られたら 間違いなく殺されるな…(トホホ…) そう思いながらも、 今夜の晩ごはんは何だろうと考えずにはいられない 私なのだった…。
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