ありがとう、大好きな君へ

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 付き合い始めて半年。それは突然だった。息苦しさを覚え、視界が真っ暗になった。どうなってしまうんだろう。  目を覚ますと、真っ先に白い天井が目に入った。辺りを見渡してみるけど、白い空間に転生したみたいに周りの壁も白かった。  不意に彼女と目が合った。呼び掛けてくれるけど、答えられなかった。彼女は怒りも泣きもしないで、ただ僕を心配している、のも思い過ごしだった。 「いつから? いつから、悪かったの? 私と会わなくなってから?」  今にも泣きそうな顔で質問攻めをする。僕が黙っていると、とうとう泣き出してしまった。彼女を泣かせてしまったことで少しの罪悪感を覚えた。 「泣かせてごめん。でも、死ぬわけじゃないんだし、大丈夫だよ。ね、だから泣かないでよ」  より一層、泣き出してしまった。まるで、僕が死んでしまうというように。そんなことはない。させない。 「だって、二、三日眠っていたんだよ。それに……」  言葉を詰まらせた彼女に僕は目を丸くした。そんなに眠っていたとは、え? 「これ、何? どういうこと?」  そこで初めて知った。僕の身体に幾つもの管が繋がれていた。  あれから、検査を幾つかした結果、病気が見つかった。僕は聞かされた。余命が後一年もないことを。彼女は泣いた。彼女を慰めることしか出来なかった。  それから、長い入院生活が始まった。辛い日々が続いたけど、彼女も一緒にいると辛さが半減する。なんだか、彼女のほうが辛そうな顔をしている。 「大丈夫?」 「うん、ごめんね」  たったそれだけの会話で彼女に笑顔が戻った。とはいっても、一瞬の出来事。また、辛そうな顔をする。 「ねぇ、そんな顔しないで。笑ってくれてたほうが嬉しいよ。ね?」  本心は無理には笑ってほしくない。でも、今は笑ってほしかった。  彼女は涙を拭うと、笑顔になった。無理なことを頼んでごめんね。そう、心の中で呟いた。 「私、颯ちゃんで良かった。今もこれからも颯ちゃん以外好きになることはない。辛かったら言ってね。隣にいるから」 「ありがとう」  僕たちは笑い、抱き合った。
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