ありがとう、大好きな君へ

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 ある日の事。ふと、病室から見える窓の外を眺めていた。もうすぐ、冬が近づいてくる。外は肌寒くなっているのかな。大きな木の葉が茶色く色付いて、一枚一枚と葉が落ちていっている。残りの葉が少なくなっていく。全部散る頃には僕の命は尽きるのかな。そんな事を考えていると、彼女の声が聞こえた。 「大丈夫?」  心配そうな表情をしている。僕は大丈夫だよと答えた。本当は身体が痛かった。彼女を心配させたくない、とはいっても遅いかもしれない。あれから、身体には管が繋がったまま。 「外、行かない?」  唐突に発した言葉に彼女は機嫌悪そうにした。分かってるけど、ずっと病室にいると、退屈な時間が増えるばかり。 「悪くなったらどうするの! 外は駄目だから」  思ったとおり、怒られちゃったな。なんだかいつもより怒りやすく、なって……。 「待って。看護師を、」  ナースコールを押そうとする彼女の腕を掴んだ。なるべく呼びたくなかった。どんなに辛くても。  押すのを諦めると、背中を摩ってくれた。 「ありがとう」  僕が言葉を口にすると、彼女は黙ってしまった。代わりに痛いところがないか訊ねながら、背中を何度も摩ってくれた。優しいところが昔と変わらない。そういう一面を好きになったのかな。 「痛い?」  我に返ると、彼女の顔が目の前に現れた。一瞬、驚いたけど、不意に抱きしめた。 「え、どうしたの?」  彼女は戸惑っている。けど、振り払おうとも距離を置こうともしなかった。時が止まったように抱きしめ返していた。  このまま、もう少しだけこうしていたい。もう少しだけ、生きていたい。彼女と一緒に……。  それなのに突然、激しい痛みが襲ってきた。僕は耐えられず、胸を抑えた。息苦しい中で意識はだんだんと薄れっていった。  それから、五日後。僕の視界は真っ暗なまま。後悔と罪悪感が残ったまま、僕は何も出来ずに意識が途切れていった。
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