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売れないバーガー屋の店長が、人々のバーガーへの欲求を引き起こす装置を造った。
たちまち暴徒と化した人々が店へ殺到した。
それは想定外の効果だった。店長は店を守るべく、最後のバーガーを持って、駅前の広場に立った。
「さあー、早い者勝ちですよー!」
人々は最後のバーガーをかけて、太陽照り付ける青空のもと、広場に押し寄せた。
犬の散歩をしていた少年が通りかかった。
彼もまた装置の放つ電波によって、愛犬を放り出してバーガーへ一直線。小学生の特性である、小さな体を生かして、群がる大人たちの隙間を縫っていく。
バーガーはもう鼻の先。少年は勝利を確信して手を伸ばす。
しかし、寸前で誰かにかすめ取られてしまった。
振り向くと、悪ガキとして有名なクラスメイトが得意満面の表情で、バーガーを持っていた。少年が勢い余って地面に倒れこむまでの刹那の中、クラスメイトはにんまりと曲がった口から侮辱の言葉を放った。
「ふん、無様なものだな。お前はそうやって這いつくばっているのがお似合いだ。勝利の美禄は、俺が頂く」
そのとき、人の壁の向こうから、小さな塊が飛び込んできた。
少年の愛犬チャッキーだ。そして勢いに乗ったままクラスメイトの鼻っ面にかみつき、その手からバーガーを奪い取った。
チャッキーは勝利の美禄が納められた包み紙を咥えて、地面に伏した主人のもとへ歩み寄る。
「チャッキー、ありがとう。ぼくのために・・」
少年が言い終わるか否かというところで、チャッキーはにやりと口角を上げる。
そして、包み紙ごとバーガーを丸呑みにしてしまった。
完
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