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(ありがとうね、おばあちゃん。きっと、いっぱい迷惑かけたよね)
改めて昔の祖母を見て、早紀の中に感謝の気持ちが沸いていた。
祖母に愛されていた小さな自分と、その祖母のために頑張っていた幼い自分。
(これが、思い出のチカラ)
どうやら、今の早紀は祖母には見えていないらしい。思い出の中にいるのなら、それは理にかなっている。
(おばあちゃん、私、大きくなってからも……もっとおばあちゃんと話せばよかった)
改めて昔の祖母を見ると、自然と自分の至らなかったことに気付く。
早紀は高校入学を機に祖母の元を離れてから、あまり連絡も取らなくなっていた。
新しい生活に必死だったのだ。合わない母との共同生活、一刻も早く自立したいという想い。
アルバイトをしながら高校を卒業し、親元を離れて大学に行った。そこからもアルバイトと大学生活の日々。
(ごめんね……いっぱいいっぱいで、大事なことを忘れてた。私……)
思えば、祖母に一本電話を入れる位の時間は作れたはずだ。
でも、気持ちに余裕がなかった。優等生でなくなった自分を、祖母に見せるのが辛かった。
「ごめん、ごめんね……」
祖母と担任が早紀のことを話しているのを横目に、早紀は涙が止まらなかった。
どんなに後悔して取り戻したいと願っても、祖母はもう、この世にはいない――。
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