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「私、自分が思っていた以上に人気者だったんですね?」
早紀が気まずそうに照れると、耀は「勿論ですよ」と言う。
「あと、このお土産類の思い出も、ご覧になりますか?」
細々としたキーホルダーたちを指して言う耀に、早紀は首を振る。
「いいえ。こちらのキーホルダーは何となく思い出しました。私がどこか行く度に、おばあちゃんに買ってきていたものです。おばあちゃん側の思い出は、もう、見なくても良いかなって……。だって、私の中のおばあちゃんの思い出が、書き換えられてしまうのも寂しいですから」
早紀はキーホルダーを眺めて、昔の自分が嬉々としながらお土産物屋を覗いていたのを思い出す。
「キーホルダー、こんなに沢山持って帰っても置くところが無いんです。だから、1つだけ選んで持って帰って……あとは、処分しようかな……」
「えっ……? 良いんですか? 思い出のチカラを持ったキーホルダーですが……」
耀は戸惑った。今迄、思い出の詰まったものを処分すると言われたことはなかったのだ。
「何言ってるんですか、紅柄さん? どんなに祖母の思い出が詰まっていようと、その祖母はもう他界しているんですから。キーホルダーなんてこんなに沢山持っていてもしょうがないです、私。さっき分かりました。私が大切にしなきゃいけないのは、やっぱり、私の中の大好きな祖母の思い出の方だから」
早紀が微笑んだ顔を見て、耀は中学時代に壇上で笑顔でスピーチをしていた羽田早紀を思い出す。
「確かに。思い出は、ただの思い出ですからね――」
耀も、そう言って微笑んだ。
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