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仕上げです
早紀は、前回受け取ったボールペンが何だったのか思い出した。
早紀が高校に入って初めてアルバイトをして、初めて受け取ったアルバイト代で祖母にプレゼントをしたものだ。
祖母が受け取った時にどんな風に喜んだのかは気になったが、死ぬまで大切に使っていた時点で早紀は満足だった。
耀の思い出鑑定を断り、ボールペンは持ち帰ることを伝える。
「ああ、なんか、もうこの家も片付いちゃうのか――」
早紀は祖母の部屋をぐるりと見渡す。何の変哲もない和室。北向きで明るくもないが、窓からは一応光が入る部屋。
「はい、今日は家の中の不用品、全て片付けます。家電の引き取りも、もうすぐ――」
その時、耀の携帯が鳴った。
「あ、早速来ましたよ。はいはい、みーやん、着いた?」
電話に出ながら、耀は玄関に向かい引き戸を開ける。
「そう、ここ――! よろしく!」
離れたところに向かって大きな声で耀が叫んでいる。
暫くすると、深山晃が玄関から入って来た。スリッパではなく、足袋のようなものを履いている。
キラキラとした金髪を短くした独特の髪型に高い背、なによりも鋭い目つきに早紀は言葉を失う。
「羽田先輩! 自分、2個下の深山って言います! 深山電器って町の電器屋で」
「ほらほら、いいからまず手を動かして――」
深山晃が嬉しそうに早紀に挨拶をしていると、耀がその晃を引っ張って行ってしまった。
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