仕上げです

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 *** 「行っちゃったな――羽田先輩……」 「よかったじゃん、SNSの連絡先聞けたんだし」  最寄り駅まで早紀を歩いて見送ると、耀と晃は自分の店に向かって歩き始めた。 「あんまり、印象変わらなかったぜ? 羽田先輩」 「ああ、思い出鑑定したら、なんか昔に気持ちが戻ったみたい」 「……へえ?」  晃は納得したように言うと、息を吐いた。 「自信なさげな羽田先輩が見たかったな……」 「やめなよ、そういうの。自分都合になるのは、みーやんの悪いとこだよ?」  耀は呆れながら晃を見る。この様子なら、晃が早紀に執拗に迫ることはなさそうだ。 「まあ、今日もお疲れ様だね。みーやんは仕事が早いし助かるよ――」 「何言ってんの。ベンちゃんはその口調の割に、やたら作業は早いぜ?」  晃がニヤッと笑う。耀はいつもは細く開いた目を鋭く開き、口元だけで笑った。 「まあ、プロだからね――」  そう言うと、キーホルダーが詰まったゴミ袋を思い出す。 (あの思い出は、ちゃんと成仏させておこう。普通に処分してチカラが暴走したら大変だ) 「なあ、ベンちゃん。なんか食べ行こうぜ。昼」 「いいよお。でも、店戻ってからまた軽トラックで出掛けるの? 『出掛けてます』の看板立てて?」 「よくあることじゃーん。それに、うちらの自家用車って軽トラックじゃーん」  晃がそう言って耀の肩に寄りかかる。 「いや、だからもてないんじゃない?」  耀は小さく呟いて溜息をついた。  朝比町は、今日も平和の一言に尽きる――。 「で、羽田先輩の思い出鑑定ってどうだった?」 「個人情報と企業秘密です!」  <完>
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