県立 種田西高等学校 3年4組の復活。

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「えっ?」 「おやおや?」  第二校舎三階。  十年前に3年4組だった多目的教室の扉を引いた途端、キョトンとした。  なにせ目の前には無い筈の机や椅子が整然と並び、クラスメイト達が当時の席順で座っていたのだ。 『やあ!!』  そして入室した俺達に全員振り向きざま声を上げたのだ。 「一斉の(せい)。まさか俺達に浴びせかけられるとは予想しなかった」 「ビックリするよね♪」  皆の笑顔の注視を浴びつつ木製小口ロッカー棚と最後席の狭間を通り抜け、俺と愛花は自分モノだった椅子を引き座った。  そして眼に飛び込んできたのは、下の机の表面に誰がつけたのが不明な引っ掻き傷や、俺自身が板の節くれを穿(ほじく)って開けた小さな穴。  解らない授業の暇つぶしにシャーペンやらコンパスの針先で工事していたのを不意に思い出した。 「ああ〜♪あんた大穴空けてたよね。しかも貫通させてさ♪」 「よく覚えてんな。大穴じゃないけどな。バレないようにしてたのに」 「…後ろからずっと見てたもん」  ショートカットでソフトテニスのレギュラーだった愛花は後ろ、窓際最後列の席だ。そして俺の前の席には…。 「よお!やたら懐かしい席順だろ?」  ザン!  と座ったのは茉莉亜ではなく、筋肉バカの宮藤雄二だ。 「ああ、うん。あの頃のまんまだ。正直驚いたよ」  しかしどうやって雄二はこの設備を揃えたんだ。他の教室。  どころか眺め見た限りの範囲で第一校舎も第二校舎も、覗いてはいないけれど第三校舎も体育館の中には、黒板も教卓もロッカーも机も椅子も体育用具やその他の備品も、全て片付いていたのだから。 「そこはクラスみんなの協力あってこそだ!」 「とても有り難いな。それはそうと肝心の茉莉亜の案内はどうした」 「心配すんな!来たぜ。お待ちかねの彼女さんがよ!」  廊下側の真ん中の席からにこやかに手を振る新開園佳が立ち上がり、窓ガラスの先の中庭。第一校舎と第二校舎の三階を繋ぐ渡り廊下を指差した。  彼女の笑顔につられて席を立って、一歩前に右足を出した俺の目線の先には、【川村茉莉亜】の大人びた姿があった。  わっ!!  クラスの皆も俺達の雰囲気から察したのか、続々と教室の前後の出入り口や窓辺にびっしり張り付いていく。 「はい!はい!3年4組の生徒諸君。行儀よく席に戻りなさい。もう多感な高校生じゃないんですよ」  パンパンと柏手(かしわで)を神前で打つみたいな小気味よさで、知らぬ間に入室していた荻谷小百合先生が黒板を背負い教卓を前にして着席して到着を待つように促した。  
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