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「きみの働いてるコンビニ。就労調査だろ。30分後くらいにバイト先に電話かかってくるはずだから、そうしたら鳴海ちゃんが電話出れば、お金おりる」
にこっと形のよい歯を見せながら、彼は言った。
「……よくご存じなんですね」
「うん。金融関係で働いてるから」
「……素敵」
銀行とかにお勤めなのだろう。
私はますます彼のことが好きになった。
その日、私は初めて借金をした。
そして、処女も失った。
それからというもの、少し過食の症状は治まっていた。
リストカットもしばらくしていない。
工藤さんの支えがあるから。
恋人の存在があるから。
私は幸福のなかにいた。
彼は同時に借金も増えていた。
友だちに騙されてお金をとられた。
不況で給料カットになった。
そういう理由だった。
私がそんな不憫な彼を支えてあげねば。
お金を渡す瞬間が、愛の挨拶のようで高揚感を覚えた。
その時の彼の笑顔が、とてつもなく輝いていた。
ある日のこと。
ちょっとトイレ、と恒例になったドライブデートで来たサービスエリアで彼は車を出て行った。
私は口臭で彼を不快にさせないように、と、フリスクを取り出した。
その時、手許が狂い、粒が下に落ちてしまった。
それを拾おうとした時だ。
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