歪んだ薔薇色の世界

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デブでブスで病気持ち。 こんな私でも出会いがあった。 それは1年前。 私が働くコンビニでお客として工藤さんはきた。 スーツ姿ですらっとしていて、髪の毛なんかサラサラの若いサラリーマン風。 覚えている。 おにぎりとカップみそ汁と。 携帯の番号を書いた紙をレジの上に置いた。 「きみ、俺の好み」 そう言葉を添えて。 デブ専という単語は知っていた。 こんな私でも陽光が射した。 大学は出たものの、正社員という肩書きがプレッシャーになるだろうと思ったので、適当にコンビニのバイトに就いた。 食品の品出しをしながら、夜に食べるものを物色し、バイト上がりに大量に購入して、家で食べては吐いていた。 吐くのは日常。 これでこころのバランスをとっている。 リストカットはたまに。 何の衝動か解らない。思えば自傷することは中2からやっていた。 切り過ぎて、病院のお世話になることもあった。 傷口を縫われながら「今回は随分やったね」と医師に言われることが誇らしくもあった。 だけど、独り暮らしで食費は嵩み、仕事も時給いくらのバイトだったので生活は汲々だった。 バイトが終わって私は独り暮らしのアパートに戻った。 独り暮らしはいい。 どんなに食べ吐きしても咎められないし、私の部屋のトイレは流れが大容量で、吐いたものも詰まることはない。
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