18人が本棚に入れています
本棚に追加
いちめん白一色の床。
沢山のモニター画面に映し出されるゲームの予告映像。
世界中からダイブ出来るだけあって、行き交う人々の見た目も多種多様だ。
「3人とも、“クロノス”へようこそ」
目の前にいる直も、上は白の詰め襟、下は白のぴったりとしたパンツ姿になっている以外は、普段と何も変わらない。
見れば、明日香も大輔もゆかりも、周囲を闊歩する人々も、皆、同じ服を着ている。
「ここは……?」
ゆかりの呟きに直が答える。
「“クロノス”のロビーです。ダイブしたプレイヤーは、どこの国からかに関わらず、最初に必ずここを通る仕様になっているんです」
「この服も仕様?」
「そう」
明日香の素朴な疑問に答えてから、直は「ギルド登録してくるのでここで待っていて下さい」と言い残して『Reception』と書かれたコーナーへと向かった。
残された3人は、きょろきょろと辺りを見回す。
「すげぇ。全部現実みたいだ」
「こんな所があるのね」
大輔もゆかりも、初めて見る世界に圧倒されている様子だ。
明日香は鏡面加工を施してある柱で、自分の姿を確認する。
ショートカットの黒髪。姉より少し細めの瞳。意識だけダイブしているはずなのに、朝、鏡で見るのと全く変わらない。
手をグー、パーと動かしてみると、ちゃんと握って放す感覚がついてくる。
なんかちょっと変な感じ。
どうしてこうなるのか仕組みもさっぱりわからない。
でも、“クロノス”はきっとこんな風に、まるで現実みたいに感じられる世界なんだ、と明日香は思った。
最初のコメントを投稿しよう!