1.クロノス

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直に促されるまま、直、大輔、ゆかり、明日香の順で4人はフィールドのすぐ横にある観戦ゾーンに着席する。 「私たちが声を出して邪魔にならないかしら」 「観戦ゾーンからプレイフィールドには声が届かない仕組みなので安心して下さい」 直がゆかりにそう答えたところで、機械的な案内音声が告げる。 『First game(ファーストゲーム)Archer(アーチャー)”』 すると、くすんだ濃緑色の衣装を着た男性プレイヤーが前に進み出た。 と同時に、彼の手の中に弓が現れ、胸部を覆う防具、指先を守るためのガード、背には矢筒が自動的に装着される。 「どうして私たちと服が違うの?」 「彼らは正規のプレイヤーだからだよ。今日俺たちは観客(ビジター)としてログインしているから“クロノス”にダイブした時の服のままなんだ」 なるほどね、と明日香が返した時には、フィールド上に2つ的が設置されていた。 「直くん、弓の種類と長さはどのくらいかしら」 「ええと……種類はロングボウで、長さは約180cmだそうです」 「弓の長さが何か関係あるのか?」 「弓道で使う弓の感覚が身体に染みついているから、あまりに長さが違うと困るなと思っていたの。でも今私が使っている並寸の弓が長さ220cmくらいだから、何とかなりそうな気がしてきた」
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