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「データで作られた対戦相手と1対1で勝負して、5点先取した方が勝ち。全身全てが有効面……って?」
明日香が助け舟を出す。
「剣で突いて点が入る範囲のこと」
ありがとう、と言ってから直は続けた。
「先に突いた方に1点が入り、0.04秒以内の同時突きの場合は双方に1点が入る、だってさ」
予想通り、このゲームはエペのルールを採用している。
同じフェンシングという競技だが、エペと明日香が習っていたフルーレでは大きく異なる点が3つある。
ひとつは有効面。エペが全身なのに対して、フルーレは胴体のみ。
ふたつめは攻撃権。エペには攻撃権がないが、フルーレは先に攻撃体勢に入り攻撃権を持たないと得点が出来ない。
みっつめに同時突き。相討ちでも得点が双方に入るルールは、決闘から派生した種目であるエペにしか存在しない。
……参ったな。
もともと日本で一番盛んなのがフルーレなのもあるけど、私はあまり背が高くないし、何よりお姉ちゃんと比べられるのが嫌でエペをやろうとは一度も思わなかった。
なのに、他ならぬお姉ちゃんのために、ゲームの中とはいえエペ剣を握ることになるなんて。
「大丈夫?」
知らず知らずため息をついていた明日香に、ゆかりが声をかける。
「あっ、大丈夫です。有効面の違いとか攻撃権の有無とか、気をつけなきゃいけないことがたくさんあるな、って思っただけで」
明日香は慌てて笑顔を作り、そう答えた。
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