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「まあ、競技を知ってる点で俺よりはましだと思うぞ」
大輔の言葉に、明日香ははっとした。
直も大輔もゆかりも、自分の時間を割いて“クロノス”に来てくれている。
お姉ちゃんを助けるために。
言い出しっぺの自分が弱音を吐いている場合じゃない。
「うん。ちょっと弱気になってた。ごめん」
その時、フィールド上では3対5でフェンサーがゲームに敗れていた。
「今負けたけど、ここでゲーム終了なのか?」
大輔の問いに直が答える。
「いいえ。勝負の結果に関わらず第3ゲームまではプレイ出来ます。ただ、3勝出来なかったので、姫を救うため“黒騎士”と対決する最終ゲームには進めません」
その言葉通り、案内音声が告げた。
『Third game“Lancer”』
すると、紺色の衣装を着た男性プレイヤーが前に進み出た。
彼の手には円錐形に似た形の長い槍が握られ、全身を覆う甲冑が自動的に装着される。
「あれ、視界相当悪そうだな」
大輔が小声で呟く。
フィールド上を見つめるその目は、鋭い競技者のそれに変わっている。
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