2.はじめての挑戦

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まずは私の出番。 ゆかりは深く息を吐いて吸った。 あとに続くチームメイトのためにも、ゲームに勝って勢いをつけるのが自分の役割だ。 『First game(ファーストゲーム)Archer(アーチャー)”』 「じゃあ、行ってくるね」 「ゆかりさん、頑張って下さい」 明日香達に小さく手を振って、ゆかりはゲームを行うフィールドに進み出る。 それと同時に、胸部を覆う防具、指先を守るためのガード、背中には矢筒が自動的に装着され、手の中にロングボウが現れた。 重さは普段使っている並寸の弓より、やや軽めだ。意識だけダイブしているはずなのに、質量を感じられるというのは何だか奇妙だけれど。 18m先の位置に的が現れる。 少し離れた位置に、データで作られた対戦相手が立ち、構えの姿勢をとる。 『Ready(レディ)Set(セット)』 自分の右側中央に構えた弓に矢をつがえ、二本指で弦ごときりきりと顔の前辺りまでひいたゆかりの脳裏に、先ほど見た今日香の姿がよぎる。 彼女に意識を取り戻してもらうためにも、この1射目は絶対に高得点を取りたい。 『Shoot(シュート)!』 ……しまった! 矢を放った瞬間、ゆかりは自分の失敗を悟った。 矢の軌道は左側に逸れ、かろうじて2点の位置に刺さる。 対して、相手の矢は8点を射ぬいていた。
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