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「明日香ちゃん、こんばんは」
コーチに呼ばれてやって来た星野大輔は、ひそひそ声で明日香に訊ねる。
「今日香はまだあのままなのか?」
大輔は今日香と同い年。
同じ私立高校に通い、同じフェンシング部に所属している。
姉はエペ、大輔はサーブル。
明日香が習っていたフルーレに比べ、同年代の競技人口が少ない種目なため、週2回はクラブに来て大人達とも剣を交えているのだ。
「うん」
大輔くん、がっかりした表情してるなあ。
これはただの勘だけど、たぶん大輔くんはお姉ちゃんの事が好きなんだと思う。
競技に集中するためなのか、今まで一度も口に出したことはないけれど。
「ところで、俺に用事って何?」
周囲に聞こえないよう、練習場から出て人気のない廊下へ移動してから、明日香は切り出した。
「大輔くん、これ見てくれる?」
スクショした画像を見せた途端、大輔の表情が変わった。
「姉を救いたくば、汝、“クロノス”で騎士となれ……なんだこれ?」
「”クロノス”って仮想空間でプレイ出来る“The Knight‘s Tale”ってゲームをクリアすれば、お姉ちゃんの意識が戻るかも知れない。だけどあと2人メンバーがいないとゲームに挑めないの」
「つまりは、俺にもゲームに参加して欲しいってことか?」
明日香が頷くと、大輔はふうっと息をひとつ吐いてから答えた。
「わかった。協力するよ」
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