蔦子の休日

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蔦子の休日

 喫茶交差点には定休日がある。  いつもは何かしら賑やかな空間だけど、定休日は眠ったかのように静かだ。 「さてと、出掛けるか」  蔦子は背伸びをして立ち上がる。  必要最低限の作業は終わり、週に1日しかないこの貴重な休日を楽しむために蔦子は外出する。  普段は裏方として働いているから営業中は菓子の製造やら、炊事に洗濯に掃除にの繰り返し、表の都梨子と同様に蔦子も奮闘している。 「いつもはあいつを誘うが、今日はいいか」  都梨子は今日も酒を飲んでつぶれてしまった。スコッチのデュワーズをロックで。  最近は嫌なことがあって爆発したのだ。 「どうしようかな」  映画を見るか、本屋でぶらぶらするか、ショッピングモールで適当に買い物か。  特に行く宛もないので散歩をしようと決めた蔦子は玄関で靴を履いて扉をあける。 「向こうの世界も同じっていうの気になるなあ」  蔦子は都梨子が初めてここの住人になったことを振り替える。  この世界の空と都梨子がいた世界の空に変化がないように、死後の世界と生きていた世界に違いがない。 「本当、先代の跡を継げるとは思わなかったぜ」  文学少女であるが、古典が苦手らしくこんなの日本語なのかよわからねえよ馬鹿野郎と暴れていた都梨子を思い出して笑う。  今は落ち着いたが昔は大変だった。  その度に先代は優しく、蔦子は厳しく見守っていた。  あの頃は毎日が昭和のバラエティ番組なのかと言いたくなるくらい、都梨子の暴走で自宅兼店の1部が壊れていったなあと蔦子が思い出して微笑んでいると誰かに声をかけられる。 「あ、蔦子さん!こんにちは」  蔦子に声をかけてきたのはこの世界のアイドルのルルだ。  いつも元気にラジオ番組を放送しており、誰もが知っている可愛い女の子の彼女に蔦子をゲっと思った。
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