第十章 あたたかい土地

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三十八、   遅れて福岡に着いた徹が、恭子と奈々に合流したのはバザーが終った時刻だった。家族三人がそろうのは、奈々が旭川の家を出て以来、ほぼ一年ぶりだ。智子の計らいで、奈々は会場の片づけ作業から外れ、ショッピングセンター中二階(ちゅうにかい)踊り場にあるベンチで、親子三人で語らう時間を持つことができた。 「あなたが言っていた『奈々は変わった』という意味がよく分かったわ。智子さんたちには申し訳ないけど、奈々のこれからのことを考えると、暫くは福岡でお世話になった方がいいように思う」 「それと、智子たちも納得しているんだろう? 親権者は俺、ということで」 「ええ、それが奈々の意志ならばということでね」    恭子と徹の離婚に伴う奈々の親権問題は、結局、徹が親権者ということになった。 『私は、原田奈々という名前が気に入っているし、原田徹と恭子の娘でいたい』  という奈々の意思表示があったこと。 そして、原田家の唯一の遺産相続者として奈々を明確に位置付けるということで、徹、恭子、古賀夫婦が合意したからだった。  
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