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ノリで村を出てきちゃったわけだけど、もう「クリスマス」まで、残り10日ちょっとしか残っていないぞ。
諦めるな、僕。1日1個、「クリスマス」に必要なものを用意しよう。それで当日までに何とか間に合うはずだ。
――「クリスマス」まで、残り14日――
そういうわけで、初日は食べ応えのある鳥を探すことにした。えーっと、メイちゃんはなんて言ってたかな。
『「クリスマス」当日は、鶏肉料理を全部注文停止にしてやる!』
『鶏になんの恨みが?』
『予定が無さすぎて、粉まみれになりながら鶏肉の下ごしらえを延々やったクリスマスイブとクリスマス。あの恨みは忘れないわ! いっそ、すべての鶏肉を食べつくしてやる!』
普通の鶏だと量的に物足りないし、せっかくだから珍しいもののほうがいいよね。僕はとりあえず、その辺にいたコカトリスをきゅっと絞めた。
――「クリスマス」まで、残り13日――
コカトリスを引きずりながら、次の目的地を目指す。どうして「クリスマス」に鶏肉を食べるか聞いたときの、メイちゃんの答えは何だったっけ。
『本場では、七面鳥っていう鳥を食べるらしいの』
『何で七面鳥が鶏になったのかな』
『うーん、単純に鳩くらいしかそこら辺にいないからじゃないかしら。2羽に恩赦を受けさせようにも、七面鳥って、動物園とか特別な場所に行かないと会えないような気がするわ』
『恩赦を受ける鳥ってそもそもなに?』
ダメだ、結局よくわかんなかったな。とりあえず、何か鳥を2羽逃せばいいってことにしておこう。コカトリスより強くて、珍しい生き物……。あ、ちょうどいいところに。
「古代竜だ」
「小僧、何の用だ。人間の魔術師どもになぶられた死にかけの竜の体を漁りに来たのか」
「え、死にかけなの?」
「見ればわかるだろう。忌々しいことよ。素材になるというそれだけの理由で、我が番もろとも毒と呪いでがんじがらめにしてくれるとは」
「じゃあ、ちょうどいいね。はい、これで2匹『恩赦』ってことで!」
「は、何をバカな……傷が治っているだと?」
「あははは、そっちの番さんの方も回復しといたから。もうすぐ眼が覚めるよ〜」
「かたじけない。この恩はいつか必ず!」
「いや、いいよ」
「ぜひこれは持って帰ってくれ」
「こんな財宝を渡されたところで持ちきれないよ~」
よし、これで大丈夫っと。七面鳥のその後のことは聞いていないし、古代竜のその後も彼らの自由ってことでいいよね。
――「クリスマス」まで、残り12日――
冬だからそう簡単に腐らないとはいえ、コカトリスってちょっとかさばるんだよね。
「あ、そうだ!」
せっかくなので、古代竜を助けたお礼にもらったアイテムボックスを使うことにした。見た目は単なる巾着袋だけど、さすがお宝だと話しているだけのことはあるね!
体積も重量も時間経過も無視するなんて、むちゃくちゃだよなあ。あ、もしかして、これがサンタクロースの袋の秘密?
『プレゼントを配るおじいさん?』
『そう。煙突からね、おじいさんがやってきて、子どもたちにプレゼントを配るのよ』
『それは不法侵入なんじゃ?』
『それが、サンタさんに限っては無罪なのよね』
世界中の子どもたち分のプレゼントを入れて持ち運ぶなんて、アイテムボックスがなければ難しいはず。もしかしておじいさんっていうのは、世を忍ぶ仮の姿で、本当は勇者とかなんじゃないのかなあ。
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