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 ――「クリスマス」まで、残り11日――  クリスマスツリーを探しにエルフの村にやってきた。 『うちでは、押入れにしまえるくらいの小さいものばっかりだったのよ』 『毎年同じものを使うの?』 『私の国はね。外国とかだと、毎年わざわざ用意したりもするみたいね。そのせいで、うっかり森のフクロウが木ごと大都会に連れてこられちゃって、大変っていう話も聞くし』  それなら僕も、メイちゃんのために特別な1本を用意しないとね。 「そんな、村が……」 「お父さん、お母さん!」  え、いきなり村が大火事だなんて。水、いや、雨を降らせなきゃ! 「そ、そんな、雨が!火が消えていくわ」  うーん、なんか怪しい動きをしているやつがいるなあ。放火、ダメ絶対! どりゃあ! 「我々の姿に気がついただと!」  エルフの村が焼かれていたところだったので、消火協力して、ついでに村を焼いた奴らを取っ捕まえたところ、世界樹の枝をわけてもらうことに成功。やったね!  ちょっとした枝だけれど、地面に植えてお世話をすればすぐにしっかりと根付くらしい。大きさ的にもちょうど良さそうだ。  ――「クリスマス」まで、残り10日――  今日の獲物は、「クリスマスソング」だ。うーん、歌ってどうやって集めたらいいんだろう。 『クリスマスにはね、特別な歌を歌うのよ』 『へー、どんな歌?』 『あんた、私に歌えと?』 『メイちゃん、別に音痴じゃなかったよね?』 『……そうね、あんたは知らないのよね。あの恐ろしい組織の存在を』 『?』 『私がここで歌を歌ったら最後、あいつらはどこまでも追いかけてくるわ。運が悪ければ、追放以上のことさえあり得るかもしれないわね……』 『ご、ごめん! 僕、そんなに大変なことだって知らなくて!』 『大丈夫、知らなくても仕方がないもの。でも覚えておいて。有名な歌を安易に歌ってはいけない。それはこの世界の不文律なのよ』  吟遊詩人たちが歌う英雄譚とは違う、口に出してはいけない歌。……もしかして、魔族の言葉で紡がれたものなのかも。国によっては、いまだに戦争中だもんね。  ちょうど海で討伐されかけていた物知りのセイレーンを見つけたので、助ける代わりに彼らが冬によく歌う曲を教えてもらうことにした。異国の黒髪黒目の乙女が歌っていたのだとか。 「え、泣きながら熱唱していたの?」 「♪♪♪」 「うーん、デートで歌うつもりなんだけどなあ」 「♪♪♪」 「歌い終わったらスッキリしていたみたいだから、大丈夫?」  「クリスマスソング」、一体なにものなんだ。
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