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――「クリスマス」まで、残り9日――
「赤い服」って、漠然としてるよなあ。ぼやきつつ、僕はサンタクロースの衣装を探していた。
『サンタクロースは、定番の赤い服を着たおじいさんなのよ。今時のミニスカサンタなんて、絶対に認めるもんですか!』
『確かに、おじいさんがミニスカとかドン引きだよね』
『ごめん、今のは私の説明が悪かった。ミニスカサンタは、可愛さが売りのやつだから。本物のサンタクロースとは関係ないんだ』
『よくわからないけど、メイちゃんは、ミニスカの赤い服とか似合いそうだよね』
『き、着るわけないでしょ!』
『えー、可愛いと思うけどなあ』
あのときのメイちゃん、可愛かったなあ。
まあサンタクロースって大量のプレゼントを持って、空飛ぶトナカイを操り、煙突をすいすいくぐり抜ける勇者だからミニスカの女の子には正直難しいかもしれない。
体力勝負のサンタクロースを支える赤い服と言ったら、やっぱりあれだよねえ。
「敵襲! 敵襲!」
「先日はよくも我らを愚弄してくれたな!」
古代竜の襲撃とやらでわちゃわちゃしているとある王国から、伝説のあかがねの鎧をいただいておいた。空を飛び、灼熱の炎に耐えるサンタクロースにぴったりだよね!
――「クリスマス」まで、残り8日――
しまった……。クリスマスツリーの飾りつけをすっかり忘れていた。
『飾りはね、深く考えずになんでもいいんだよ』
『うん』
『天使やステッキを飾りつけるところもあるし』
『怖い!』
『うん、私もちょっと苦手なんだ。夜見ると正直不気味だよね』
まさか「クリスマスツリー」に、捕らえた天使と武器を一緒にくくりつけるとは。意外とメイちゃんたちは、好戦的な種族なのかもしれない。
とりあえず、ツリーのてっぺんで輝くお星さまは外せないという話だったので、僕は星を収穫にきた。
僕らの国では、星は畑で育つものだけど、メイちゃんの国では違うらしい。一度、収穫を手伝ってもらったら「オクラみたい」って笑ってた。「オクラ」(?)と違って食べられないけど、その笑顔で僕は胸がいっぱいだよ。
――「クリスマス」まで、残り7日――
なんとメイちゃんの地元では、「クリスマス」が近づくと自宅に魔女の家を作るらしい。
『最近の流行りでね。「ヘクセンハウス」って言うんだよ』
『またすごいものを作るね』
『うーん、そうだね。手間はかかるけれど、子どもたちは喜ぶしね。失敗しても大丈夫なように、多めにクッキーを焼くのがコツなんだって』
メイちゃんちの魔女は、クッキーで仕事をしてくれるんだなあ。実に平和だ。
僕はとりあえず有名な美酒を樽で用意して、魔女のおばばの家に向かった。
「一日だけ、家ごと村に来てくれないかな?」
「おやまあ、告白の前座にあたしを呼びつけるとはいい度胸だね」
やっぱり、バレてる~。だから、魔女は怖いんだよ。
「ごめん、でもちゃんとドワーフ印のワインを樽で用意したからさ」
「やれやれ、そんな酒ごときで動くと思われるなんてねえ」
「もう、すでに飲んでるじゃん!」
それにしてもメイちゃんたちは、魔女を招いて一体何をお願いしているんだろう? 僕はこれから先もずっとメイちゃんと一緒にいたいけど、それは魔女にお願いするものでもないもんね。
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