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 ――「クリスマス」まで、残り3日――  断崖絶壁の崖は、風が強い。冬イチゴ、生きるか死ぬかの場所に生えるのやめてくれない? まあメイちゃんなら、大喜びで謎の名探偵と犯人ごっこをするんだろうけどさ。 『やっぱり「クリスマス」にはケーキよ。それもイチゴのケーキね!』 『へえ、メイちゃんの住んでいたところでは冬にイチゴが採れるんだね』 『いいえ、採れないわ。だからこの時期のイチゴは死ぬほど強気価格なのよ……』 『それ、イチゴじゃなきゃダメなの?』 『わかっているのよ、商業主義に乗せられているんだって。でも!』  わかるよ、メイちゃん。だってそのケーキは、メイちゃんにとって思い出の味なんだよね。だから僕もね、頑張るから。  ――「クリスマス」まで、残り2日――  今日は、ケーキの土台に必要な黄金の小麦を集めてみた。 『家族と一緒にね、「クリスマスケーキ」を作ったことがあるの』 『メイちゃん、ケーキも作れるんだ。すごいね』 『ううん、初めてだったからスポンジが全然膨らまなかったのに、お父さんってば一生懸命食べてくれて。その夜、お腹を壊しちゃったの。本当にバカだよね』  メイちゃんが笑いながら、ちょっとだけ泣いていたのを僕は知っている。気がきいた言葉なんて用意できないから、代わりに素敵なものをたくさん準備するよ。  ――「クリスマス」まで、残り1日――  僕は知ってるんだ。メイちゃんが本当はすごく寂しがりやだって。メイちゃんが、たぶん元の国に戻れないことも僕は知っている。 「クリスマス」の話をするときに、いつも怒ってみせるのは、泣きたいのを我慢しているからなんだよね。  だってどんなにひとりぼっちのクリスマスの話をしていても、最後には楽しかった家族の話になってるもん。  ねえ、メイちゃん。僕じゃダメかな。僕と一緒にいるだけじゃ、寂しいのはなくならないかな。  手の中の小さな箱を、ぎゅっと握りしめる。これだけは、僕の村もメイちゃんの国でも変わらないらしいプレゼント。  遅くなって本当にごめん。もう少しだけ、待っていてくれる?
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