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「荒れ果ててんな……」
「庭でバーベキューなんかしたらつまらなくて死にたくなりそうだ」
「道路でやった方がまだ楽しいかもしれません」
先輩達もほぼ同じ感想を抱いたらしい。
玄関まで行き、敬礼をした制服の巡査に中に入れてもらう。
外観は西洋風のわりに、家の中はかなりオリエンタル色が強かった。中国風のタペストリーや敷物、小物などがいたるところにある。
とはいえ、あまりゴテゴテと飾り立てている訳ではなく、それなりに選び抜いているようで雑然とした様子ではない。
中国人の家かと聞かれたら、うんといいたくなる程ではあるが。
室内を見渡すと、まだ鑑識は来ていないようだ。
そして、案内をしてくれた巡査が第一発見者だということである。
「おまえがホトケさんをみつけたのか」
「いいえ。自分は通報を受けて、ここにやってきたところ、この家の住人の部下である人物とともに鍵のかかった部屋の扉を破り、中で遺体を発見したものであります」
「部下?」
「あの方々です」
巡査が掌を向けた。
玄関を入ってすぐの客間らしい部屋のソファーに二人の男が腰掛けていた。
痩せと小太りの二人で、どちらも背広を着ていたが、どちらかというとラフな着こなしでまっとうなサラリーマンには見えない。
ともに三十代ほど。
痩せは前屈みになって床を凝視し、小太りは放心して天井を眺めていた。
殺人事件の第一発見者としてはよくある態度であった。
「あいつらの名前は?」
「田中司と梅崎達也。ともに被害者の磯貝慎吾の会社の従業員です」
「被害者はその磯貝慎吾でいいのか?」
「はい。自分と梅崎が、磯貝の部屋の中に踏み込んだ時に、梅崎が顔を確認しています。田中もおそるおそるですが、すぐに確認してくれました。居間に本人のものと思われる写真が飾ってあり、自分もとりあえず本人であると信じました」
「あとで家族にも確認させよう。指紋の鑑定もな」
「―――君が梅崎とガイシャの部屋に踏み込んだ、といったな。どういう状況だったんだ?」
「機捜にも話しましたが、署に通報があり、ちょうど近くを警邏していた自分が駆けつけて、玄関にいた二人に詳しく事情を尋ねました」
「それで?」
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