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一歩、内部に踏み込む前から僕らは異変に気が付いていた。
細貝という男が中で血まみれで倒れているということよりもなにより、室内の異常さに。
この部屋は丸かった。
正確に言うと、もともとは学校の教室の半分の広さ(だいたい十六畳程か)がある一般住宅には不釣り合いなサイズの部屋の四隅、天井と床と壁を含めた角の部分が、すべて石膏のようなもので丸く成形されて、まるで蛾の白い繭の中に閉じ込められてしまったかのような錯覚を覚えたのだ。
よくよくみると、ただの石膏というよりもDIYで使うような粘土などが混じり合ったもので埋めたのだとわかり、床と天井の一部を除いて、ほぼすべてがまん丸になっているが出来上がりはあまり綺麗なものではない。
作業そのものが手慣れていない素人によるものだとすぐにわかる。
しかし、そこには僕らにもはっきりと見て取れる狂気があった。
異常なまでの執着があった。
それは圧倒的なまでの恐怖にも似ていた。
「―――なんだよ、このおぞましい部屋は……?」
倒れている遺体よりも何よりも、僕にはこの部屋を作った人間の心の有り様が恐ろしかった。
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