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被害者は、細貝匡史。
年齢は四十代だということしかわからない。
何故かという、経歴に不明な点が多々発見されたからである。
まず、戸籍自体が被害者のものではなく、数年前にホームレスであった細貝匡史から売られたものであり、免許証も偽造、その他のものも偽造か虚偽という謎の人物であったのだ。
勤め先は、細貝自身が代表取締役を務めるLLCフューチャー・ワークス。
LLCとは合同会社の略で、お手軽に設立できるので最近増えてきている会社形態だ。
フューチャー・ワークスは多角的に事業を経営し、つい最近までは太陽光発電施設を設置し、売買するという事業をメインにしていたが、経済産業省の指針で太陽光の売電価格が引き下げられたことでほとんど撤退している。
もともとフューチャー・ワークスは再生可能エネルギーの買取が始められたころに、真っ先に手を挙げて、売電価格が現在の二倍以上であったことから莫大な利益を得ることで発展した会社である。
従業員の数は少ないが、代表取締役である細貝(本名がわかるまで、仮にこのまま呼ぶことになった)の営業手腕とアイデアで様々な事業に手を付け、それらすべてが成功するという有望企業でもあった。
ここしばらくはバイオマス発電に手を出し、個人の経営する中小企業でありながら億以上の売り上げを叩きだしているらしい。
田中と梅崎は、フューチャー・ワークスの従業員であり、今日ここにやってきたのは昨日から上司と連絡が取れなかったためだということだ。
細貝自身の胡散臭さもあってか、この二人もいわゆる堅気には思えない。
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