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「久遠はどうだ? どんな思い付きでもいい。何か意見はあるか」
「……はい。そうですね。頭部と手足の先端が他の部位よりも念入りに焼かれている気がします。あと、服を脱がされているということも考えると、靴を履いていないというより、そっちもまた脱がされて焼かれたのではないでしょうか。靴下も履いていませんし」
「確かにな」
「指紋を消すためでしょうかね?」
僕―――久遠久の感想について、藤山さんが同意して、それについて佐原先輩がまた意見を出した。
この二人の先輩たちは、所轄署の強行班係の刑事としては例外的に穏やかな人たちだ。
新米の僕なんかの話だって、きちんと最後まで聞いてくれるし。
佐原先輩の意見にしたがって、藤山さんが遺体の指先をじっと見つめた。
指先は激しく炭化しており、指紋の検出は困難と思えた。
「歯の方は無事なようだから、都内のすべての歯科医に照会を求めてみよう。あとは身元がわかるようなものを探してみるか。久遠は機捜の連中とこのあたりを捜索してみてくれ」
藤山さんが、屍体の口腔を指で突っつきながら指示を出す。
僕がざっと周囲を見わたすと、所轄署の刑事たちと鑑識係が熱心に仕事を始めていた。
黙々と作業する姿はさすが日本の警察だ。
「ちょっとあんた下がっていてください!」
「捜査中なんですってば!」
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