第一話 焼魚事件

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 現場は人通りの少ない場所ということもあり、立ち入り禁止の三角コーンとロープを張れば誰も近づいてこないのだが、どういうわけか一番近くのパトカーの傍で機捜の隊員が誰かともめていた。  現場保存のため立ち入り禁止にしているというのに、何者かが入り込もうとしているのを止めているようだった。  ちなみに機捜とは、機動捜査隊の略であり、街中をパトカーでパトロールしながらいざ110番があったら即座に駆けつけて、現場保存・被害状況の確認・犯人の情報収集などの初動捜査を行なう捜査のキモである。  僕たち所轄署の強行班係がくるまで、事件の概要をだいたい調べ上げておいてくれたりする。  その機捜の隊員が止めているのに殺人現場に入ろうとするなんて、マスコミか前後不覚の酔っぱらいだろうか。  僕は声をかけてみた。  「どうしたんですか?」 「あ、ああ、久遠か。よかった。この変なのを止めてくれ」 「変なの?」
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