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どうやら胸ぐらをつかみでもしない限り、僕の存在さえ認知してくれることはなさそうな自分勝手さだった。
だが、そんなことをしたら任意捜査の逸脱行為でこっちが懲戒されてしまう。
後ろから機捜の刑事に肩を叩かれて慰められてしまった。
「自分は所轄の久遠久巡査長です。そういうあなたこそ誰なんですか? マスコミの関係者なら、会社の方に抗議させていただきますよ」
「んー、私は警視庁の信仰問題管理室の降三世明。役職はとりあえず警視。事実かどうか確かめたかったら、あとで本庁の方に問い合せてくれればいいよお」
警視だって?
マジなのか、と僕は隣の刑事を見る。
あっちも鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている。
もしも本当なら、僕どころか署のお偉いさんも巻き込んで厄介なことになるかもしれない。
だが、この自称警視は特に僕らのことを気にした様子もなく、また顔を覆って天を仰ぐと、そのままブツブツ言いながらこの場から立ち去っていってしまった。
残されたのは、何が何だかわからない僕たちだけ。
「なあ、久遠」
「何かな?」
「信仰問題管理室って、どんな部署だ」
「……聞いたこともないよ」
「だよな。……でもさ」
「何?」
「警察の仕事に、宗教って関係あんのか?」
「……どうだろう?」
……これが、僕と降三世明警視との出会いであり、僕が狂気と冒涜に満ちた、反吐がベトつくような気持ちの悪い世界へ足を突っ込むきっかけとなるのである……。
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