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第一話 焼魚事件
また、酷い屍体だ…。
舗装された道路から離れた倉庫の空きスペースで、ダンボールが被せられ、さらにその上を防災用の砂がまかれていることから、本来は発見そのものがもっと遅れていた可能性があった。
たまたま通りがかった作業員が、群がる野鳥に気づかなければ、遺体発見まであと一日はかかっていただろうとは、先輩刑事の弁だ。
僕は屈みこんだ先輩の背中越しに屍体の様子を覗き込んだ。
屍体は地面の上に寝かされ、四肢を縮めている。まったく焼けた布がまとわりついていないことからも、一糸まとわぬ全裸のまま焼けたのだろうとわかる。
黒くただれた皮膚は、高温で一気に焼かれたことの証拠だ。四肢を縮めているのは屈筋が火によって締まった結果だ。
焼死体特有の吐き気のする臭いが鼻をつく。
目を凝らすと、頭部の部分が陥没しているのがわかる。おそらくは激しく鈍器で殴打された結果であろうし、それが死因なのだろう。
ちらりと周囲を見渡しても、どこにも脱いだ服らしいものは見当たらない。
服を一切着ていないで全裸で焼かれたというのがまた不気味だった。
もう何度も見慣れた無残な他殺屍体。
だが、まだまだ気味悪さは感じてしまう。
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