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「聞かなきゃよかった。そんなのはあいつに直接伝えてやってくれよ」
「はいお兄さん!毎日伝え合ってます!」
「そうか、わかった、谷川も蕎麦食っていけよ」
「お前のお兄さんじゃないって言わないんですね」
「……言うだけ無駄なのがわかったから。おめでとう、あいつと仲良くしてやってくれ」
「ごめーん!谷川君!谷川君のお蕎麦食べちゃった!」
「いいんだよ、瑚珠ちゃん!さあ、どっか開いてるとこにごはん食べに行くよ!」
「うん!!」
十人前の蕎麦は、どこか宇宙の彼方に消えてしまったらしい。
遠くから聞こえてきたのは除夜の鐘。
「あけましておめでとうございます!」
重なった瑚珠と谷川の声は軽やかだ。
谷川は今にもスキップをしそうな足取り。
「おめでとう。遅くなってしまってすまなかったね」
咲は温かいまなざしで二人を見守っている。
「おめでとう」
くるりと背を向けて、登は雑に小さく手を振った。
【完】
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