プロローグ 名もなき戦い

1/1
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

プロローグ 名もなき戦い

 うまく回ってるように見える世界の裏側に、私たちみたいな日陰の中でしか生きられない人間がいる。  私たち日陰の民は自分の価値を守るため、存在意義を守るため、この世界のどこかで戦っている。 それは時に誰かの心をズタズタに切り裂き、殺してしまったり、誰かに恨まれ、責められたりするけれど──。  泥水を啜りながら、時に心や身体の一部を失いながら、誰に後ろ指をさされようとも、居場所を求めて惨めに図太く戦っている。その戦いを嘲笑う権利など誰にもない。  これは生きるための〝生戦(せいせん)〟。  すべての人類に許された幸せになる権利を守るための〝正戦(せいせん)〟。  ──そう、世界の裏側に生きる私たちの名もなき〝聖戦(せいせん)〟。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!