走れキヨシ

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 教室に戻るとちょうど2時間目が終わったところだった。 「お、早かったな。車で送ってもらったんだな」  担任にはお見通しだった。清志はすみませんでしたと担任に謝り作文を提出した。    お昼休みになると清志は手品師のおじさんの事を友達に話した。 「凄いおじさんが公園にいたんだ。空っぽの箱からスーパーカー消しゴムを出したんだ。もっと凄い手品を見せてくれるって言うから学校が終わったら行こうぜ」 「清志は道草食ってたのか?」 「違うよ。途中でトイレに寄ったらいたんだよ」 「それ怪しいヤツじゃないのか?」 「別に怪しくなんかなかったよ。本当に手品を見せてくれただけだよ」 「え〜。手品とかいって大きな箱に入れられて誘拐されるかもしれないぞ」 「箱に入らなきゃいいだろ?」  そんな話をしていると芹那が友達と一緒に近くに寄ってきた。 「それ、やっぱり怪しいわよ」  眉間にシワを寄せてそういった。そのシワがまた可愛い、と清志は思った。 「怪しいって何が? 絶対に面白いから一緒に行こうよ。みんなで行けば何かあっても大丈夫だよ」  思っていたよりもスムーズに芹那を誘えたと密かに清志は喜んだ。 「私のいとこの学校の近くにも手品師が来たんだって。学校が終わってみんなで見に行ったら本当に凄い手品を見せてくれたんだって」 「だろ? 誘拐なんてされなかったんだろ?」 「うん。誰かが誘拐されたなんて話はしてなかった」 「じゃあ大丈夫じゃん」 「だけどね。終わったあとに手品グッズ売りつけられたんだって」 「え?」  おじさんは凄い手品を子供達に見せてくれた。そして最後に「みんなも手品やりたいよね。じゃあ特別に売ってあげるよ。これが500円、こっちは700円。さあ、おうちに帰ってお金を持っておいで」と言ったそうだ。みんなは自分も手品が出来ると喜んで家に帰ってお金を持って来た。そして買った。しかし手品グッズはすぐに壊れたりインチキだったりしたそうだ。 「子供相手にインチキ商売をする大人がいるんだって。気を付けなきゃね」  そう言って去っていく芹那の髪が太陽の光に照らされてキラキラしていた。見とれながらも子供を騙す大人がいると知って清志は失望した。 「おい清志。芹那にお礼言っとけよ」 「え? ああ、インチキ手品師に騙されずに済んたよ」 「違うよ。日直変わってもらっただろ? 今日配り物多くて大変だったんだぞ」 「え、そうなんだ。帰りに言うよ」
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