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皓ちゃんに触られたらもちろんだけど、見てるだけでもしたくなっちゃう時がある。今日だってお昼休みの呼び出しのメッセージを見ただけで、僕の下肢は疼いてしまった。女の子と事故とはいえ触れ合ってしまったのを見られてからの呼び出しに、そこで何が行われるのか分かってしまったから。
お昼が待ち遠しくて、授業の終わりとともに教室を飛び出してしまった。そして走って行った準備室。
それだけ見ると僕はすごく皓ちゃんを好きみたいだ。
でもね、世の中にはセフレという関係もあるらしい。いわゆる『ベッドの中だけのお友達』。
愛はなくてもお互いに欲望を満たすためだけに身体を繋げる関係。
愛はなくてもエッチな気分になってそういうことが出来ちゃうってことだよね。
だから必ずしも『欲情する=恋してる』では無いのだ。
僕は皓ちゃんが好きなのかな?
いや、好きなんだけど、その好きの種類が分からない。
僕は皓ちゃんへの気持ちが分からないけど、皓ちゃんの僕に対する気持ちも実は分からない。
皓ちゃん、僕のこと好きって言わないんだよね。
『奈津はかわいい』
『奈津はオレのものだよ』
その言葉は何回も言われたけど、『好き』の言葉はもらったことがない。
僕のことを自分好みにしたけど、それは育成ゲームのキャラみたいな感じなのかも・・・。それか、自分専用のお人形さん。世の中にはそういうことをするための専用のお人形さんがあるらしい。
そう思ったら、なんだかちょっと気持ちが沈んだ。
僕って皓ちゃんにとってなんだろう・・・。
そんなことを考えてるうちに、教室に着いた。
「あ、帰ってきた」
僕が席に着くなり友だちの榎木が駆け寄ってきた。
「どこ行ってたんだよ。茅野が来たんだぞ」
「茅野?」
「今日お前にぶつかった女子だよ」
「ああ、あの・・・」
思いっきり体当たりしてきた子か。お陰で僕は後ろに倒されて頭を打ったんだよね。今日皓ちゃんが、後ろからだったのは後頭部にたんこぶが出来てたからだ。
だから当分仰向けでは寝れないし、正常位では出来ない。
「・・・なんか反応薄くない?あの茅野が来たんだぞ?」
「あのって、他にも茅野がいるの?」
結構珍しい名前だよね?
「違うよ。茅野って学年一可愛いって言われてるんだよ・・・て、佐野、本当に知らないの?」
ものすごく呆れた顔をされたけど、知らない。興味無いもん。
「お前・・・普通はもっと喜ぶもんだろ?あんな可愛い子にぶつかられて抱き合ってさ、おまけにわざわざ休み時間に尋ねてきたんだぞ」
「そう言われても・・・。あんまり関わりたくないなぁ」
もしまた会って話したなんて言ったら、皓ちゃんにもっとおしおきされちゃうよ。
「関わりたくないって、お前・・・」
僕の言葉に驚いたような顔をして、次にため息をつかれた。
「佐野さ、せっかく高校生になったんだぞ?まさに青春じゃん。可愛い彼女とか作りたいとは思わないわけ?」
彼女?
全くもってピンと来ない。そんな僕に榎本は盛大にまたため息をついた。
「あのさ・・・」
と、まだ何かを話しかけたところで教室のドアが開き、先生が入ってきた。それを見て榎本はとりあえず席に戻っていった。
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