甘い朝

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今初めて自覚した気持ちを図星されて僕は焦って暴れる。だけど、次に耳元で囁いた小さな言葉に、僕はその動きを止めた。 「本当?」 その小さな囁きが信じられなくて、もう一度訊いた。 「本当。奈津がオレと同じ思いで良かった」 それって、僕が好きだから誰にも触らせたくないってこと? 「あの女子と抱き合ってた時のオレの気持ちがわかるか?焼きもちなんて可愛いもんじゃないぞ。おまけに可愛いい奈津の頭にたんこぶ作りやがって・・・」 抱き合うって・・・体当たりされて思わず反射的に受け止めてしまっただけだけど・・・。まあ、受け止めきれなくて後ろに飛ばされちゃったんだけどね。 「でも茅野のお陰で僕、皓ちゃんへの思いが分かったんだよ」 茅野が教えてくれた。好きな人に対する思いを。 「茅野がね、好きな人が誰かと一緒にいるのは許せないって教えてくれたんだ。だから僕、坂本先生と皓ちゃんが一緒にいたのを知って皓ちゃんが・・・」 と、そこで僕は言葉をきった。だってさっきまで嬉しそうだった皓ちゃんの顔が怖くなっていたから。 「皓ちゃん・・・?」 僕を抱きしめる腕がさらに強まる。 あ、あれ? 「お前、いつあの女と話したの?」 「え?」 「ぶつかった時はすぐに保健室に行ったろ?話す暇なんてなかったよな?いつそんな話をあの女としたんだ?」 眉間に皺を寄せて睨むように僕を見る皓ちゃんに、僕の背中に冷たい汗が流れた。 「あ・・・えっと・・・さっき、ちゃんと謝りたいからって呼び出されて・・・」 「呼び出された?二人きりで会ったのか?」 「周りが騒がしくって・・・」 「誰もいないところで改めて謝られた?」 「そうっ」 「謝るだけなのに、なんで好きな人への気持ちの話になったんだ?」 「あ・・・」 実は告白もされました、なんて言ったら皓ちゃんもっと怒るよね?でも黙ってても怒るし・・・どうしよう・・・。 次の言葉を探して頭がぐるぐるなっていると、上からすごく低い声が降ってきた。 「これは、家に帰ってじっくり訊かないとな」 その言葉に身体がびくりとする。 「こういう時のために、あれも用意してあるし・・・」 口の中で呟く皓ちゃんに、僕の心臓はバクバクし始める。 あれ、てなんですか・・・? 前に一度凄く皓ちゃんを怒らせた時のおしおきは今でも覚えてる。あの時もいろいろな道具で責められたけど、あれ以上の何かを用意してるあるの? 「こ、皓ちゃん?」 ビクビクしながら皓ちゃんを呼ぶけど、皓ちゃんは怖い顔のまま僕を離してドアの鍵を開けた。 「先に帰ってろ。オレも遅くならないうちに帰るから、シャワー済ませておけよ」 そう言ってドアを開けて僕は出されてしまった。 先にシャワーを浴びて待てということは、そういう事をするということで・・・。 どうしよう・・・またあんなことされちゃうのかな? 前に酷くおしおきされた時のことを思い出して怖くなる。だけど、それと同時に身体の奥がじんと熱くなった。そして鼓動が早くなる。 早く帰らなきゃ。 僕は足早に家に帰った。
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