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まりんは消火器の使い方を頭に叩き込んで、両手で抱えるようにして持ち、自分が粉を吸い込まないようにマスクをして、鏡の前に向かった。……さあ、行くわよ。「消化煙幕の術」を、見せてやるわ……!
「道具入れ」の袋の紐を肩にかけ、ふう……と深呼吸をして。まりんは、ベッドに立てかけてある鏡の前に立った。
すうっっっ……!
まりんを再び、「ところてんになる感覚」が襲った。数秒と経たぬうちに、まりんは隠し通路の大きなカーブを曲がった、「元の位置」に戻っていた。
だっだっだっだっ……!
すぐに、カーブの向こう側から、ディオンが走って来る足音が聞えてきた。もう、すぐそこまで来ている。……ディオンさんが、カーブを曲がったところが「勝負」ね……! まりんはもう一度、深く深呼吸をして。カーブの曲がり角に対して、正面を向いた。
「ここにいたか……!」
カーブを曲がって来たディオンが、まりんに飛びかかろうとしたその瞬間。まりんは消火器のピンを抜き、レバーを「ぐっ!」と握りしめた。
ぶしゅうううううううう……!!!
まりんがホースの先を向けた、正面にいるディオンに。勢いよく、大量の消火剤が噴出された。
「うわああああっ、ぶぶっ、ぶぶぶっっ!!」
急に目の前が真っ白になり、ディオンは何が起きたかわからず、両手を闇雲に振り回した。まりんも同時に、真っ白になった視界の中に、ディオンの姿を見失っていたが。やがていくらか視界が開けてきたところで、ディオンの振り回す両手が見えた。「そこにいる」のがわかれば、問題ない。まりんは、空になった消火器を振り上げ、動き回る両手の間に、思いっきり振り下ろした。
がつん……!!
手応えは、あった。目の前に充満していた消化剤が、通路の床に蓄積されていくに連れ。消火器で頭を殴られ、気を失って床に倒れているディオンの姿が浮かび上がって来た。
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