パン工房

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 僕の働いているパン工場は地下にあるので、この季節太陽の光を浴びられる機会はとても貴重だ。 仕事は朝5時に始まり、夕方4時に終わる。朝方家を出るときには日はまだ出ていないし、帰る頃にはもう日が落ちている。 日光を浴びられるのは、二週間に一度回ってくる食事当番のときに限られていた。地上に出て食材を買い、工員全員の分の食事を作る。 今日は待ちに待ったその当番の日だった。 「斉藤さん、そろそろ買い出しに行ってきます」  時計が10時半を指したのを確認してから主任に告げた。 「お。今日は高橋の番か。ってことはそろそろ、かな?」 「そうですね。そろそろ、です」 「よ。皆さん、今年も高橋のぶり大根の季節到来だそうですよ! お手を合わせて。よーお!」  パパパン、パパパン、パパパン、パン!  工員全員が拍子を打ち、笑いあった。そのなかで、一ヶ月前に臨時雇いになった中本みくだけが不思議そうな顔をしている。 「みくちゃん行こう。支度して」 「は、はい」
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