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そう、男の次の標的は、初姫たちの十メートルほど前を歩く美優だった。
「いやぁああああ」
美優が真っ青な顔で、こっちに向かって走り出す。
「ヤバい。俺たちも逃げよう」
「うん」
返事をしたものの、初姫の身体は、弘之の後を追わなかった。
身体が動かないのだ。
必死の形相で初姫のすぐ近くまで逃げてきた美優のすぐ後ろに、包丁らしきものを振り上げた男が迫っている。
男のモヤが、牛のような形に変化したとき、初姫の頭の中に、強烈な憎悪の感情が沸き上がった。
「助けてぇ、あっ!」
美優が転んでしまい、男が包丁を振り上げて襲いかかる。
次の瞬間――
初姫の身体は素早く、男に飛びかかり、右手を振りかぶって、男の頭部のモヤを鷲掴みにする。
「うがぁあああああああああ」
そのまま男の頭部を地面に叩きつけたところで、紫のモヤが男の頭部から離れた。
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