わたしのきもち

17/17
15人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「嘘だね」  彼の言葉に、私は「なんで」と言いかけた。 「だって、美空は嘘を吐くとき、絶対に俺の目を見ないから」  彼は泣いていた。私も泣いていた。二人で声をあげてぼろぼろと泣いた。  明け方まで夢の中で、大好きだった彼の手のひらを触ったり、彼の優しい笑顔を、情けない泣き顔を心に刻み付けた。もうないはずの私の心臓はずっとどきどきしていた。  彼の夢を去るとき、「幸せになってね」と彼を見つめて言った。彼はただ頷いた。  私はこれで、この世から消える。  でも私は確かに生きていた。  そのことを、今日一日で心の底から実感した。実家から出るときも、ココアに別れを告げるときも、大好きな人の為に移動する時間も、私の心はずっと動き続けていた。  彼にお別れを言うことも出来て、思い残すことはもうない。これ以上いると、彼の未来(これから)の邪魔をしてしまうかもしれない。だからもう、私は消える。  最後に残す一言はこれにしようとずっと決めていた。  大好きだったよ。ありがとう。ばいばい。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!