わたしのきもち

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 この程度で躊躇ってしまうようでは、到底彼の元まで辿り着けない。駅までの道を急いだ。考えまい考えまいとしていても、浮かぶのは彼の顔だった。  私は彼のことが大好きだ。まずは手。手フェチの私は、彼の繊細な動きを易々とこなす細長い指先と大きな手のひらにやられてしまった。細長いけれど、関節はごつごつしていて、私の柔らかくてぷにぷにした手とは全然違う、男の人の手だった。もう理想も理想過ぎて、目を離せなくなってしまった。  おまけに彼は左利きで、私の心をこれでもかと掻きまわす。ただ何かの書類にサインをするだけで格好良いなんて反則だと思う。  駅に着き、改札を抜けて始発に乗る。  都内にある私の実家と、北海道にある彼の家は大分離れている。今日はこれから空港に向かい、飛行機に乗って、彼に会いに行くのだ。  私と彼の出会いは大学だった。  その時、彼はまだ実家の家業を継ぐ気がなかったから、とにかく北海道を出たかったと言っていた。私はもう既に彼が好きだったから、彼の参加する飲み会にはきちんと参加して、耳を大きくして情報収集した。彼の控えめな笑顔と、丁寧な箸さばきにときめいて、顔の赤さを誤魔化す為にアルコールをたくさん飲んで、飲み会の途中で酔いつぶれて眠ってしまったことは、今思い出しても恥ずかしい。
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